2016/09/13

ネパール記(1)ヒマラヤだけに非ず、ネパールの魅力と発展の可能性

 中国とインドに挟まれる内陸国ネパール。多くの人は、「ヒマラヤ山脈」がある「エベレスト」の国であり、山岳地域という認識を持つでしょう。事実、ネパールの主要産業の一つは観光業であり、首都カトマンズではトレッキングの準備をする外国人ハイカーで賑わっています。


 一方、2006年の内戦終了以降、目覚ましい経済成長を遂げており、特に地理的条件から中印を結ぶ将来的な陸路の経由地であり、また南アジア全域に広がる物流網のハブになると言われています。その環境下、緩衝地帯ではなく、中印が衝突する場所になっているのもまた事実であり、結果として首都カトマンズの景色に特段大きな変化は見られないものの、両国、特に中国の対ネパール投資が近年急増しています。

※カトマンズの環状道路「リングロード」の一部。
標高1,350mに位置するため空が低く、紫外線も強いです

 国土面積は北海道の約2倍、人口は約3,000万人近くと決して小国ではありません。ネパールと国境を面するインドの三つの州の合計人口だけで約5億人、首都デリーまでもカトマンズから約1,000km程度の距離にあり、昨年、ネパール第二の都市ポカラと印デリーを結ぶバスの運送サービスが始まりました。そして、この経路、山岳地域を通りません。ここに多くの人が知らないネパールの魅力と経済の実態があります。

参照:http://www.earaidnepal.org/volunteer/maps.html
 
 上記地図はネパールの標高を示したものとなり、北に中国、南にインドが位置します。色分けされた一番上、標高2,500m以上を一般的に「マウンテン」エリア、真ん中二つ、首都カトマンズがある標高標高700m~2,500mを「ヒルズ」エリア、そして下二つ、標高700m以下、特にエメラルドグリーンで示す標高300m未満の「タライ」呼ばれるエリアには東西を結ぶハイウェイが約1,000km以上にも渡って建設されており、ネパール物流の大動脈且つ貿易の関所。この「マヘンドラ・ハイウェイ」の全ての面がインドと国境を接しています。


  建設中の道路も数ヶ月後には


 このような舗装状況になり、信号が殆どない国の基幹道路の一部となり、近い将来、西にデリー、東にダッカに結ばれます。「タライ」はネパール経済の生命線。また、上記地図と画像が示す通り、ネパールの国土のうちヒマラヤが占める割合は僅か1/3、残りの2/3は亜熱帯の国であり、特にタライでは夏の平均気温が40度を超え、水が豊富なネパールでさえ今年は異常気象から河川が完全に干上がりました。


 食も豊富です。農林水産省「ネパールの農林水産業概況」にもある通り、主要生産農産物の一つにサトウキビがあるなど、亜熱帯作物が多く、「ヒルズ」地域北部の寒冷地を好む作物と合わせて多くの農産物が路上販売されています。


 宗教は、国民の約八割がヒンズー教徒。残りの大多数を(チベット)仏教徒が占めます。地理的に「マウンテン」に近ければ近いほど「(チベット)仏教」が、「タライ」に近ければ近いほど「ヒンズー教」が信仰されています。多民族国家であるため、宗教上の戒律は厳しくなく、昨年の大地震での死者を弔う儀式では多くの犠牲者が北部(チベット)仏教地域に集中したにも関わらず、カトマンズのヒンズー教寺院で執り行われました。この二つの宗教は共存しながら且つ融合しているのがこの国の特徴でしょう。宗教多様性の根幹にあるのは、「タライ」ルンビニという都市に仏教の開祖ブッダ生誕の地があること。今尚、世界中の多くの仏教徒が巡礼をしにこの地に足を運びます。一番奥で座禅を組むアジア人女性はスマホで般若心経を読んでおり、現代社会を象徴していますね。


 この国に出入りするようになってから来年でちょうど10年。この記を通じて、ネパールの魅力と、課題山積のなか、その発展の可能性について述べて参りたいと思います。


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ネパール記目次
(2)10年前の経験と10年間の変化

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